Ken McNamara & Alex Bevan, 1991 (2nd ed.), Tektites
テクタイトは、小さい、小石のような天然のガラスで、薄いグリーンから黒などの色のものがあります。これらは、世界でも4つの(おおきな)地域でしか見つかっていません。それらは、東南アジアとオーストラリア、アフリカの象牙海岸、チェコスロバキア、北アメリカの四カ所です。

600,000が東南アジアで見つかっており、100,000がオーストラリア、55,000がチェコスロバキア、2,000が北アメリカ、そして200個象牙海岸で見つかっています。
こうしたものが存在していたのは30,000年も前からわかっていましたが(クロマニョン人が装飾用の石として利用していました)、1900年に鉱物学者、F.E. Suessがテクタイト(tektite)という名前を付けました。この名前は、ギリシャ語の`tektos` から来ており、その意味は『溶けた』というものです。実はこの名前はテクタイトの大きな特徴を表しています。テクタイトはその生成の初期段階において溶けた形跡があるのです。いつ、どうやってそれが溶けて、しかももともとどこから来たものなのか・・・といったことはここ200年ほどで論争を呼んでいます。しかしながら、多くの研究機関はテクタイトの形から、生成過程のどこかで大気を高速で通過したに違いないとの見解をもっています。テクタイトの面白いところは、いまだに納得のいく説明ができないことです。数え切れない理論が提案されましたが、わかっている事実を完全に証明するものは現れていません・・・この奇妙な、そしてシンプルなものについて。
最初に解釈を試みたのは、有名なガラスを作っていた18世紀のボヘミアだったというのは運が悪かったようです。当然これらは人が作ったガラスの破片だと思われました。19世紀には、人が作ったものか、または火山が元でできたもののどちらかだろうと考えられました。オーストラリアでは、土着民はずっと知っていましたが、初期の記録では、ダーリン川地域で見つかったもので、1836年にチャールズ・ダーウィン(進化論で有名な人)がビーグル号でシドニーを訪れた際に見せられました。当時の理論と同じく、ダーウィンもテクタイトは地球の火山がもとでできたと考えていました。彼に見せられたのは、obsidianと呼ばれる、とても不思議な形をして天然の火山ガラスでした。この世紀初頭には、土着民に人工的に作られたはずだという意見もあり、失われた文明の証拠として考えられたこともありました。この意見は後に完全に否定されてしまいましたが。
20世紀ではほとんどの理論は地球外起源のもので、直接月から来たというものか、巨大隕石が地球に当たったことを原因とするものです(後述)。テクタイトは隕石と間違えられることがありますが、隕石ではありません。
テクタイトが不思議な理由のひとつはその分布です。世界中で見つかっている隕石と異なり、テクタイトは限られたストローンフィールドでしか見つかりません。こうしたストローンフィールドはすべて緯度が比較的低い場所です。さ らに、放射線のを使った年代測定では、各地域でのテクタイトの生成された時期は異なっていますが、地質学的には比較的最近です。最も最近のテクタイトは35,000,000歳ですが、最近ハイチのカリブの島の堆積物から発見された化石テクタイトは、64,500,000歳くらいです。これは地球上の最も古い鉱物と比較されなければなりません。西オーストラリアの Mt. Narryerのジルコンには、40億年歳を超えるものがあります。隕石は46億年歳くらいだと測定されており、太陽系が生まれた時だと考えられています。
---省略---
構成物質は堆積岩や花崗岩に似ています。テクタイトにはシリカ(Si02)が65〜82%。次に多いのは酸化アルミニウム(Al2O3) 残りは酸化鉄、酸化マグネシウム、(酸化?)カルシウム、(酸化?)アンチモン酸カリウム。
こうした物質はそのまま結晶として存在するのではなく、ガラスに含まれています。これから、テクタイトの元であった液体は急激に冷やされたため、結晶がつくられる時間が無かったためと考えられます。
テクタイトの起源は隕石だという意見のサポートとして、ニッケル鉄金属(Kamacite)、ニッケル鉄の硫化物(troilite)、ニッケル鉄のリン化物などが含まれているテクタイトが多く見つかっていることが上げられます。これらの鉱物は隕石に特徴的で、地球上の石に見つかることはほとんどありません。
---省略---
テクタイトを構成している物質はストローンフィールドごとに異なっていますが、それは異なった石から、異なった時期に生成されたこととつじつまが合います。しかし、たとえ同じストローンフィールドでも多種存在します。これは特にオーストラライトに顕著です。
---省略---
テクタイトには様々な形があり、「ボタン」、「ボート」、「カヌー」、「ダンベル」、「レンズ」、「オーバル(楕円)」、「涙」など、30種類くらいの形で表現されています。生成過程を理解するために、テクタイトの様々な形は詳しく研究されています。オーストラライトはテクタイトの中でも最も形のバリエーションが多く、形の生成過程のほぼ完全な記録が得られていいます。
3つの基本的なプロセスがオーストラライトが地上で見つかる時の形を作っています。(1)主要固化(2)飛行中の2次変化(3)地上での変化
![]() |
(1)主要固化 溶けた状態で大気を突き抜けると、テクタイトは固くなっていき、何種類かの形を取り得ます。形は、回転しているかどうかや、回転のスピードなどによって異なります。回転していない場合は、後部の表面はもとの表面のままだと考えられます。(要約) |
![]() |
|
||
|
何千年も前に起きたこうした変形を分析するのは、取るに足らない秘密を探っているようですが、実用的な用途もあるのです。NASAの科学者が月面計画(Lunar
programme)に適した、炎上することなく地球の大気圏を突き抜けられる宇宙船をデザインしようとしたとき、科学者は自然に彫刻されたオーストラライトの形に目をつけたのです。大気圏突入時の高温の摩擦熱から船を守る熱シールドをデザインするときに、彼らはオーストラライトの形を参考にしました.
![]() |
(3)地上での変化
地上に落ちてからは、地表か浅く埋まった状態で環境にさらされ、様々なレベルでのウェザリングや浸食をされることになります。主に、縁の部分が崩れ落ちたりすることで形が変化します。(要約・画像なし)
---省略---
オーストラライトは、西洋人のオーストラリアへの移民に1830年代から知られていましたが、土着民は特別な石としてずっと大切にしていました。テクタイトは土着民の文化に様々な意味で重要な役割を果たしていました。南オーストラリアのいくつかのグループの伝説にオーストラライトが出てくるため、おそらく土着民がの最初の理論を作ったと言われています。グループごとに、テクタイトには特別な力があると考えています。中央オーストラリアの数カ所の地域では、オーストラライトが発見者に幸運をもたらすと考えられていたため、よく探し求められました。西オーストラリアの多くの地域では、Maban、と呼ばれていました。これは『マジック』に関わるものすべてを表す言葉です。これらは道具や武器としても利用されました。
テクタイトはいくつもの土着民族において、怪我や病気を治すヒーリングストーンとして重要な役割を果たしてきました。『マジック』としての性質は呪術医(祈祷師)に使われ、患者からテクタイトを『引き抜く』ことで、病気をテクタイトと一緒に取り除くということをしていました。南西オーストラリアの数地域では、オーストラライトは病気を寄せ付けないと考えられていました。他のグループは逆に、オーストラライトは破壊的な力があると考えられていました。記録では、まず病気を呼び、最後に死に至らしめる『死の指針』だと考えられていました。Gippslandの数地域では、オーストラライトにさわるだけで死につながると信じられていました。『死の指針』の儀式では、病気にさせるという願をかけて侵入者にオーストラライトを投げつけるものもありました。
少なくとも南西オーストラリアの土着民の一部族には、オーストラライトは雨乞いの儀式に重要なものでした。太陽を輝かせたり、風を止める、あるいは狩りの成功を願っていたという例もあります。西オーストラリアのマグネット山からのオーストラライト2つは、メッセージの精神的伝達(テレパシー)に使われていました。それらは祈祷師のひげにつけられ、装着者のへそから伝達することで長距離のメッセージを交換する力があると考えられていました。
90年前に A.S. Woodwardが、『それらがどこから来たのか誰も知らない』と言いました。今日では、どのように、何からテクタイトが生成されたのか、大分理解が進みました。しかし、ほとんどのテクタイトのストローンフィールドについてはWoodwardの言葉が未だに正しいと言えます。テクタイトの起源を説明しようと、多くの理論が作られ、そのうちのいくつかはとても巧妙なものでした。しかし、Thomas Huxleyの言葉を言い換えると、実際すべての『美しい理論』は『醜いちっぽけな事実で台無しにされている』。
(この先はまとめになります)
有力なもの:
月の火山説
地球火山説(弱い)
月に隕石が当たってできた説
地球に隕石が当たってできた説
その他:
彗星、彗星の尾など。
| ポイントとしては、テクタイトが一度大気圏を出て、地球に戻った形跡があるということです(テクタイトの形が飛行した跡を残しているため)。 地球の火山では、噴出のシステムが水蒸気によっており、大気圏を抜ける脱出速度は得られないため、これはありません。月の場合は、火山の噴出システムが水素であることを想定すれば可能です。ただし、最近は火山活動が確認されていないことや、月面で採取された土とテクタイトの成分比率が合わないことなどが問題となっています。 |
|
| 月に隕石が当たってできたという説は、月には無数の隕石があたってできたクレーターがあるためです。そのショックが大きければ月面の脱出速度は得られるでしょうし、事実月の破片が南極などで見つかっています。問題は、テクタイトが4箇所でしか発見されていないことです。もっと広範囲にあっても良いはずです。
地球に隕石が当たった説がもっとも信頼がおけるでしょう。少量ですが、東南アジアのテクタイトから鉄-ニッケルが見つかっていることや、クレータが出来たときにその土壌の一部が蒸発することなどがあげられ、噴出した水柱(のようなもの雲柱?)はインパクト時より大分速いスピードで上昇するのではないかという意見があります。小さい物質は大気中でスピードが急激に落ちますが、インパクトにおける大気の爆発によってテクタイト(の物質)が大気圏外に一度出られるではないかという意見でサポートされています。同位体を使った分析によって、テクタイトの元になったクレーターや地域の特定も進められています。 |
![]() |
| すべての理論においての問題点は、なぜテクタイトが3千5百万年前までのものしか見つかっていないのかということです。ただしこれはただウェザリングのせいかもしれません。 | |